留数定理

この章では、複素関数論における留数定理(Residue Theorem)について紹介していきます。

留数定理の定義と基本性質

  • 留数定理とは、複素平面上の閉曲線に沿った積分を、曲線内の孤立特異点における留数(Residue)を用いて計算できるという定理です。
  • 具体的には、関数 \( f(z) \) が領域内で正則(解析的)であり、ただし有限個の孤立特異点 \( a_1, a_2, \ldots, a_n \) をもつとき、閉曲線 \( C \) に沿った積分は次式で表されます。 \[ \oint_C f(z)\,dz = 2\pi i \sum_{k=1}^{n} \operatorname{Res}(f, a_k) \] ここで、\( \operatorname{Res}(f, a_k) \) は点 \( a_k \) における \( f(z) \) の留数を表します。
  • 留数(Residue)とは、特異点周りのローラン展開における \( (z-a)^{-1} \) の係数のことです。

概説

複素関数の積分計算は、複雑な経路をたどる場合でも、 特異点における局所的な情報(留数)を使って簡単に求めることができます。

留数定理を使えば、積分の結果を次のように求めることができます。

  • 閉曲線 \( C \) の内部にある特異点だけを考慮すればよい。
  • それぞれの特異点における留数を計算し、それらを合計する。
  • 合計に \( 2\pi i \) をかけると、曲線に沿った積分値が得られる。

このテクニックは実数積分の評価にも応用され、実解析と複素解析の橋渡しをする重要な理論です。

例題

次の閉曲線積分を留数定理を用いて求めなさい。

ただし、\( C \) は原点中心の半径2の円周とする。

  1. \( \displaystyle \oint_C \frac{1}{z-1} \, dz \)
  2. \( \displaystyle \oint_C \frac{1}{z^2+1} \, dz \)

略解

  • (1) 特異点 \( z=1 \) は円 \( |z|=2 \) の内部にある。 留数は \( \operatorname{Res}\left(\frac{1}{z-1}, 1\right) = 1 \)。 よって積分値は \( 2\pi i \times 1 = 2\pi i \)。
  • (2) \( z^2+1 = 0 \) の解は \( z=i \) と \( z=-i \)。 \( |i|=1, |-i|=1 \) なのでどちらも円 \( |z|=2 \) の内部にある。 それぞれの留数は \[ \operatorname{Res}\left(\frac{1}{z^2+1}, i\right) = \frac{1}{2i}, \quad \operatorname{Res}\left(\frac{1}{z^2+1}, -i\right) = \frac{-1}{2i} \] よって合計は \( \frac{1}{2i} + \left(\frac{-1}{2i}\right) = 0 \)。 したがって積分値は \( 2\pi i \times 0 = 0 \)。

答え: (1) \( 2\pi i \) (2) \( 0 \)

タイトルとURLをコピーしました